Return!!(1) -5- 朝起きると、雨はすっかり上がってた。 いつもと同じように支度して朝ご飯をお腹に収めると、わたしは家を出た。 「うわぁ……」 空は思わずため息が出ちゃうくらい綺麗なスカイブルー。 白い太陽の光がきらきらと降り注いで、街路樹の影を道に焼き付けてる。 アスファルトに視線を落とすと、あちこちに水溜まりが出来ていて、道を歩くと、その天然の鏡は空の青い色を映して、まるで空に挟まれてるような感じだった。 水溜まりの中に手を伸ばせば、青い空を掴めそうなくらい。 その向こう側で、ひっくり返したみたいな世界が広がってるような、はっきりとしたブルー。 「咲」 ヒナちゃんだった。 わたしの後ろから歩いてきて追いついた。 「一緒に行こ?」 ヒナちゃんはいつもとおんなじようににっこり笑ってくれた。 その笑顔にじんわりと胸があったかくなる。 「うん」 わたしは大きく頷くと、ヒナちゃんと並んで道を歩いた。 「昨日は、ごめんなさい」 ヒナちゃんがポツっと言った。 「え?」 「咲に雨の中帰らせちゃった」 ヒナちゃんは、本当に申し訳なさそうにした。 「わたしなら平気だよ。謝らないで、ヒナちゃん」 「うん……」 ヒナちゃんはまだすっきりしない顔だった。 やがて、もう一度口を開いた。 「それでね、話そうとは思ってたんだけど……なかなか言えなくて。こういうの、なんて言ったらいいのか……」 わたしはヒナちゃんの言葉を待った。 「私ね」 「うん」 「小林君にね、告白、されたの」 「そ、そっか……」 「前からね、付き合って欲しいって言われてたんだけど、上手く断れなくて」 「うん」 わたしは慎重に言葉を選ぶヒナちゃんを見守った。 察しのいいヒナちゃんには、わたしが小林君のこと苦手なのはバレバレだろうから、ヒナちゃんは一生懸命言葉を選んでいた。 「でも、よく知らない人とはお付き合い出来ないって、ちゃんと断ったのよ? けど、一度でいいからデートして欲しいって」 結局断りきれなかったって、ヒナちゃんは最後にポツっと付け加えた。 胸が苦しくなった。 それから深呼吸して、ヒナちゃんはわたしを見た。 「それでつい、昨日約束しちゃったの、来週の土曜日。だから、ごめんなさい、咲と出かけられない」 「う、ううん、気にしてないよ。大丈夫」 それよりもわたしは、不安げなヒナちゃんのことが気がかりだった。 [Back*][Next#] [戻る] |