Return!!(1) -2- 「ヒナちゃん!」 お昼休みの教室。 わたしはお弁当を持ってヒナちゃんに駆け寄った。 ヒナちゃんの席の隣を借りると、さっさと包みを開けて陣取る。 近くに寄ると、ヒナちゃんから甘い香りがしてきた。 香水?シャンプー? どっちでもいいけど、すごくいい匂いがする。 おまけにヒナちゃんはとっておきの美人なのだ。 名前は東城 雛菊。 だからヒナちゃん。 お家が物凄くお金持ちで、"お屋敷"って言葉がぴったりの古風な洋館に住んでいる。 髪の毛は艶々としたストレートロングで、スタイル抜群! さらに成績もトップクラス、運動神経もすっごくいい。 こんな完璧なお友達を持ったわたしは幸か不幸か。 もちろん幸せです。 だって、ヒナちゃんは優しいし、同い年の私から見ても憧れの存在なんだから。 「どうかした?」 ヒナちゃんは透き通るような、少し低い声で返事をした。 落ち着いてるって言うのかな。 ヒナちゃんの声は、ゲンシュクな気分になるのです。 同じ高校3年生とは思えないその上品な顔立ちに、通り過ぎていくみんなが振り返ってしまう。 幼馴染の特権があるわたしは、こうして話しかけられるけど、 他のみんなはちょっと違うみたい。 遠慮してるように見える。 確かに美人だけど、ヒナちゃんは漫画に出てくるようなお嬢様じゃない。 週末には一緒にショッピングしたり、ソフトクリームを食べて過ごす、 ごく普通のジョシコーセーだ。 「ねねっ、来週の土曜日空いてる?」 「どこか行くの?」 ヒナちゃんの大きな瞳が瞬く。 「実はね、駅ビルにネイル教室入ったんだ。そこの体験コースに行きたいな〜って。 けど、一人じゃ参加し辛くって……」 ヒナちゃんはため息一つついたけど、次の瞬間-- 「分かった、一緒に行ってあげる」 とにっこり微笑んだ。 ね、ヒナちゃんはやっぱりとってもいい子だ。 [Back*][Next#] [戻る] |