誰かに聞いた怖い話
・・・穏やかな海4
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『もし…もしだぞ、俺が先に死んだら…きっと皆に会いに来るよ…あの世とやらが、どんな世界なのかを…皆に教えに戻って来る…』

サーファーの彼は、そう呟いて微笑んだのです



『俺は今迄、友人達から聞いた数々の幽霊話を、これっぽっちも信じてはいなかった…でも…』

不意に話を止めた彼は、私達をゆっくりと見回し再び言葉を繋ぎました



『でも、本当に在ったんだろうな…色々と不思議な出来事が…皆とこうして話をして来て…今では俺も信じられる…信じてるよ…有り難うな』

彼の口から語られたその言葉が、どの様な意味を持っていたのか、その時の私には分かりませんでした

けれども、私はその言葉の中に…何かを感じていたのです

上手く説明出来ない何かを…



『穏やかな春の海かぁ…もう……』

そして彼の最後の呟きは、燃え盛る薪の崩れ落ちる音でかき消され、私の耳に届く事はありませんでした





『幽霊か…本当は何なのかな?』

吹き荒ぶ山風の音に負けずに、病院長の呟く声が私の耳に迄達したのは、もしかすると奇蹟に近い事だったのかも知れません

それ程、嵐の到来を告げる先触れは樹々を揺らし、波を蹴立てて吹き荒れていたのでした

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