誰かに聞いた怖い話
・・・山越えの道6
.
『通れない?』
『そう…』
僕の困惑を全く無視して、彼女は短く答えました
そして彼女は続けたのです
『私達がさっき迄走っていたあの道は、今頃は凄い渋滞の筈よ』
『渋滞?でも…さっきは渋滞なんて…』
『今に分かるから…それ寄り、いよいよ山道に入るわよ!落石には十分気を付けて!ゆっくりで良いわよ、慎重にね』
『…』
彼女の顔に一瞬浮かんだ、少し煩しそうな表情を視線の内に捉えた僕は、彼女にそれ以上尋ねる事を止めたのです
僕にはその時何故か…彼女の言葉の謎が彼女の言う通りに、その内きっと僕にも分かる筈だと確信していたのでした
『一寸車を停めて!そこ!その場所で後ろの車を先に行かせて!』
車内に流れる軽快な調べを遮って、不意に彼女が車のハイビームに浮かび上がった、道路脇の駐車スペースを指差したのです
一瞬僕は追突を心配してルームミラーに視線を走らせましたが、予め打ち合わせをしていたのか、後続の四駆は僕の車とは十分な車間距離を取っており、急に合図を出しながら減速した僕達の車の脇を、これ又、予め打ち合わせを済ませていたのか、何の躊躇も無く抜き去って行ったのでした
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