誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝4
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『叔父がまだ幼い頃に、世間を騒がせたあの事件がおきたそうなんだ』
『その頃叔父は、まだ幼かった…だから、その話についての叔父の記憶は、大分曖昧だった筈なんだよ』
『これから話すこの話も、叔父が成長し周囲の様々な人々から耳にした情報を、叔父がその時に経験した事だと、自分自身で記憶を作り替えているかも知れない…勿論、その話を聞いた僕も、全てを記憶している訳じゃないから…そのつもりで聞いてくれないか…』
病院長の息子は、そう前置きをしてから、彼の叔父との会話を思い出す為に、揺らめく焔を暫くの間見つめていた…
その一家が大陸に渡ったのは、まだ戦争など始まる遥か前の事だった
住み馴れた日本を後にして、まだ見ぬ新天地へと向かう人々には、余人には窺い知れぬ様々な事情があったのだろう
だから人々は、明るい未来を…これから向かう新天地で成功して、故郷へ…日本へと錦を飾る日を、夢見ていたに違いない
船の船尾から日本を見つめる、その一家も…
『駄目だ…もう終わりだ…』
その一家が大陸に渡ってから、既に数年が過ぎ去り、一家の支えとなるべき主人は、色々な事業に手を出しては、失敗を繰り返していた
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