誰かに聞いた怖い話
93話…消えた仲間
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『此所が駐車場みたいですね…あれっ?』

キャンプ場に来る迄の山道では久しく見られなかった街灯の下、豪雨の最中とは言えくっきりと浮かび上がるキャンプ場への案内看板を横目に、僕達は先に到着して多分酒盛りを始めている兄達と合流する為、キャンプ場の駐車場へと車を乗り入れたのでした



でも、御世辞にも広いとは言えない駐車場には、見慣れた兄の車の姿は無かったのです



『兄ちゃん…一体兄ちゃん達は、どうしたんでしょう?』

『今晩兄達が訪れて居る筈のキャンプ場は、間違いなく此所の筈なんです』

『まさか…此所じゃ無くて、あの山の向こう側のキャンプ場だったのかな?』

『ねぇ…先輩はどう思いますか?』

『此所で間違いないですよね?』

予想もしなかった事に狼狽して、矢継ぎ早に隣りに座る彼女に問い掛けた僕に、彼女は黙って首を横に振るばかりでした



先発した兄達と今晩落合う約束をしていたキャンプ場の駐車場に、兄達の乗って来た筈の日頃見慣れた車の姿は無かったのです



いいえ…そればかりでは有りませんでした

豪雨に煙るキャンプ場の駐車場に停まる車は一台も無く、明かりの洩れるテントの姿も一張りも無かったのです

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