誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝16
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親父が亡くなった後、あの男が再び姿を現す様になって、今日で四度目の来訪になる
アイツは二度目に来訪した折りに、その陰湿な本性を俺に顕したんだ
アイツは…親父のスープの秘密に唯一人気が付いていて、その秘密を世間にバラされたくなければ、親父と同じ様に口止料を払え…と、そう脅迫して来たんだ
俺は最初の内は、わざと大袈裟に否定し、相手の出方を窺った
そうするとアイツは、自分が俺達の住んでいた地方に配属されていた時期があり、その時にその料理を食べた事があると言った
そうして、俺の親父に無理矢理書かせた念書を、大事そうに懐から取り出し、俺の目の前で振って見せたのだった
そこで俺は大層驚いた振りをして、アイツにしがみつき…幾らでも払うから、世間には内緒にしてくれる様に頼み込んだのだ
それは勿論、芝居だったのだが…アイツは俺を信用した
言われた通りに金を出す…何も出来ない、便利な奴…それがアイツの俺への評価だった
その時には、一ヶ月程のんびり暮らせるお金を、黙ってアイツに渡した
その代わりに、良い金づるが出来たと喜び、警戒心を失ったアイツの後をつけて、身寄りの無い天涯孤独の身の上だと調べあげたのだった
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