誰かに聞いた怖い話
・・・後継ぎの思い2
.
『何故病院に伝わる話って、哀しい話が多いんだろうな?』

『病院に入院する患者が、全員亡くなる訳じゃないのに…』

『ちゃんと病気や怪我が治って、無事に退院する人達だって沢山居るのに…何故か分からないけど…病院に残る思いって、無念の内に亡くなった患者さんの話ばかり…』

『僕は、子供の頃に見て記憶している…病に苦しむ患者さんとその家族達が、病気や怪我が治って喜ぶ顔やホッとした様な表情を浮かべる表情を、自分が医者と言う立場で見たかった』

『医者である父と祖父…他にも医療に携わる身内は沢山いたから、その仕事の大変さは良く分かっているつもりだったけど…僕は患者さん達に信頼され、喜んで貰える様な医者になりたかったんだよ…』

病院長の息子の彼は、淋しそうに呟いたのです



『君ならなれるよ!』

『君なら、きっと立派な医者になれる』



『有り難う…な』

そして彼は弱々しく笑ったのです

私の励ましの言葉を耳に、彼はその誠実そうな顔を崩して笑ったのです



『なぁ、皆もそう思うよな?』

私の同意を求める言葉に、誰も言葉を発しませんでした

私はその沈黙に言葉を失ったのです

いつもと明らかに違う、その雰囲気に…

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あきゅろす。
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