誰かに聞いた怖い話
88話…疑問
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『変ですね…』
彼のその一言は、僕の心の呟きでもありました
『やっぱり変ですよ…』
そして彼は、もう一度同じ言葉を呟いたのです
『…兄ちゃん』
そして僕の心の呟きも、知らず知らずの内に唇からこぼれていたのでした
『キャンプ場迄、もう直ぐです』
僕はフロントガラスに打ち続ける雨粒に視界の半ばを奪われながらも、湖畔のキャンプ場に向かって豪雨の最中黙って車を走らせ続け、目まぐるしく動くワイパーがガラスを伝う雨水を一瞬払い除けた瞬間に、道路左側に立つ立て看板の文字を読み取る事に成功し、隣りに座る彼女に向かって声を張り上げ伝えたのです
『そう…』
不安に震える僕の叫びに、彼女は短く一言応えただけでした
『兄ちゃん…』
激しく動くワイパーの音すら聞こえない豪雨の中、僕達の乗る車の中に聞こえるのは、車の薄い装甲をドラムの様に叩き上げる雨音と、時折辺りを昼間の如く照らし上げる閃光と共に鳴り響く雷鳴だけだったのです
ですから僕の続いての呟きは、彼女には届かなかった筈でした
彼女に聞こえたのは、僕が更に続けて発した叫びだった筈です
『あそこがキャンプ場です!』
…と言う
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