誰かに聞いた怖い話
・・・火の玉11
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錆を浮かび上がらせ変色した釘が、男達の握る釘抜きにより一本…又一本と、棺桶から注意深く抜かれて行きました



静かな山沿いの墓地に響くギィギィと軋む音が、その場の皆の心を沈ませ、ただでさえ薄気味の悪い墓場を、更に不気味な雰囲気に代えて行ったのです



『それじゃあ、開けてくれんか…ゆっくりとだぞ、ゆっくりと…』

その緊張仕切った住職の言葉につられて、墓を掘り起こして居た男達の顔や仕草にも、ありありと緊張の色が窺えたのでした



『それじゃあ、開けやすぜ…おぃ、そっちを持ってくれ』

そして遂に男達の纏め役なのだろうか、その中の一人が他の者に指示を出すと、率先して棺桶の蓋の一方に手を掛け、もう一方の蓋の端を握る男と一緒に静かに持ち上げたのです





ゆっくりとずらされた蓋の下からは、皆が予想していた光景とは全く違う光景が顕れたのです

…とは言っても、棺桶の中に埋葬されて居る人物が、全くの別人に変わっていたとか…埋葬されて一月も経っておらぬのに、既に白骨化していたとか…その様な事ではありません

確かに中に埋葬されて居たのは、此の間亡くなった本人でしたし…別の何かが一緒に入って居た訳でも無いのです

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あきゅろす。
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