誰かに聞いた怖い話
・・・火の玉8
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ガリガリッ…
ガリッ…
彼の聞き間違えではありませんでした
それは確かに、彼の身体の真下から…土饅頭の中から聞こえて来るのです
『!』
彼はその事実を認識すると反射的に跳ね起き、その場から一刻も早く離れ様と痛む身体で駆け出したのです
けれども彼は、十メートルも走らぬ内に再び何かに足を取られて、雨に濡れたぬかるみの中に投げ出され…そうして彼の記憶は再び途切れる事となるのでした
彼が墓地の中で発見されたのは、明け方近くなり東の空が明るくなってからでした
その朝は昨晩とは打って変わり、暖かい光を注ぐ太陽が東の山並みから姿を顕し、濡れた地面からはもうもうと水蒸気が上り始め、その揺らめきの中に彼が倒れていたのです
その時、彼の意識はありませんでした
冷たい雨に濡れた服のまま、一晩を過ごした彼は肺炎を併発して高熱を発し、数日間も熱にうなされ生死の狭間を彷徨っていたのです
その上彼は熱が引いてからも記憶の一部を喪失したままで、あの晩墓地で何があったのかさえ覚えてはいませんでした
彼があの事を思い出し、念の為にとその墓が調べられる迄には、まだ幾日もの刻が必要だったのです
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