誰かに聞いた怖い話
・・・火の玉7
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その青白い炎の塊は、暗闇の中を歩く彼のスピードに合わせるかの様に、付かず離れず一定の距離を空けたまま飛び続けたのです
その模様を誰かが見ていたならば、まるで仲の良い兄弟が鬼ごっこをしている様な…そんな風に見えたかも知れません
それは勿論、晴れ渡る青空の元では…と言う意味ですが…
その青白い炎の塊はまるで生きている様に、器用にも墓石と墓石の間を、彼の事を何処に導くかの様にゆっくりと飛び回りました
そしてある地点に辿り着くと移動するのを止め、ゆらゆらと青白い炎を揺らめかせながら、彼の近付くのを待っていたのでした
ガリッ…
ゆらゆらと揺らめく青白い炎の塊に、今度こそはと右手を伸ばした彼は、足元に盛り上げられた真新しい土饅頭に蹴躓き、その場に俯せに倒れたのです
そして彼は聴きました
土饅頭に抱き付く様な体勢で、彼は聴いたのです
ガリッ…
ガリガリッ…
それは何か硬い物を噛み潰している様な…何かを擦り合わせている様な…神経に触れる音でした
その不思議な音に神経を集中させ、そっと聞き耳を立てた彼の耳には、その音の出所が自分の真下からだと思えてならなかったのです
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