誰かに聞いた怖い話
・・・火の玉5
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それから、どの位の時間が経っていたんだろうか?



いつの間にか天気の良かった空も一面雲に覆われ、その空からしとしとと降り続ける雨が、すっかりと闇に包まれた墓地に眠る彼の上にも降り続けていました





『…ん』

そんな時間になってから、彼は目覚めたのです

気絶し眠る彼の顔を照らし出す、明るい炎の揺らめきに彼は意識を取り戻し、ゆっくりと瞼を開けたのでした



最初彼は自分の顔を照らし出す明かりを、いつまでも帰らない自分を捜しに来た、誰かの提灯かと思っていました

けれども、それは…違いました

うっすらと開けた彼の瞳がそこに見付けたのは、ちろちろと燃え上がる松明の明かりでした

彼には、最初そう見えていたのです



確かに少し位の雨ならば、油分のたっぷり含んだ松明の方が、良く燃え都合が良いのです

けれども、その松明は何処かが少し違うのです



その色は真っ赤に燃え盛る熱い炎では無く、何処か冷たさを感じさせる青白い炎でした



そこで彼は、まだ頭の醒め切らぬまま、その青白い炎に向かって右手を伸ばしたのです



スイッ…



その青白き炎は、彼の右手を避ける様に、スーッと左側に動いたのでした

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