誰かに聞いた怖い話
・・・ビーチの夜7
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『お前…!?』

思わず大きな声を出し掛けた俺に向かって、彼奴は人差し指を唇に立て示しました

そして俺は彼奴のその仕草と、彼奴の俺に向ける視線が、俺に静かにする様にと語り掛けている事に気付いたのです



『…驚いたな、一体どうしたんだよ?』

俺は他の誰かが起き出して来ても直ぐに気付く様に、男性用トイレの入口付近に立ち、小さな声で彼奴に問い掛けたのです



俺には信じられませんでした

同じ宿の別々の部屋に泊まっていたならば、多分俺も部屋を抜け出して遊びに行った事でしょう

けれども、二人の宿は別々で…その上隣り合わせでは無く、宿泊者の割り振りで少し離れていた筈なのです



俺には…こんな芸当は出来ませんでした

夜中に宿を抜け出して、他の宿に忍び込む真似は…俺にはとても真似する事など、出来様筈も無かったのです



『いやぁ、同じ部屋になった奴等が、あんまり面白くない奴等でさぁ、表のコンビニにチョロッと買い物に出たついでの散歩だよ』

その時彼奴は、少し潜めた声でそう言ったのです



此の時俺は気付きませんでした…何も気付かなかったのです

いつもとは違う…彼奴の言動には…気付かなかったのです

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あきゅろす。
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