誰かに聞いた怖い話
・・・ビーチの夜4
.
そこだけは、夜の間中ずっと電気がついていました
でも…それは仕方の無い事だったのです
各部屋に洗面所やトイレの無い此の宿では、それが当たり前の事でした
海沿いの旅館…そう言う触れ込みでしたが…実際は民宿に…いいえ、普通の民家を襖で仕切った程度の造りで、隣りの部屋の様子が分かってしまう程だったのです
…しかし、海は好きだけど、何でこんな宿なんだろう…
…如何にも…って、そんな雰囲気で…
…やっぱり、何か薄気味悪いよな…
俺がそんな事を考えながら、廊下を歩き出した時でした
その音が聞こえて来たのです
それは小さく…大きく…聞こえたのでした
此から俺が向かおうとしていた、洗面所の方角から…
…誰か居るのかな…
…水道の音…だよな…
…でも…変だぞ…
俺は薄暗い廊下を歩きながら、自分の心に芽生えた小さな疑問の答えを、必死に探していたのでした
確かに何処かおかしいのです
そしてそれが何なのかに俺が気付いたその時には、俺はもう近付き過ぎていたのでした
『…居なかったんだ』
サーファーの彼は、そう呟きました
『そこには誰も…』
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