誰かに聞いた怖い話
・・・深夜の客2
.
その話は年号の変わる前から…

今の様に不景気な世の中になる以前から、地元のタクシー運転手の間で目撃され噂になっていた話だった



その目撃談は発生場所こそ違えども、大筋では一緒の話に思われていたのです

何故ならば、その話の中に出て来る女性の服装が、一昨日も昨日も全て一緒だったからでした





『今日は大分儲けさせて貰ったな…まさかこんな時間に、山の上迄行く長距離が入るなんて、本当についてたな…全く観光客様々だよ』

日頃無愛想な彼も、駅の側にずらりと並ぶ客待ちタクシーの列の中の一台として、今晩を終える筈の所を思いも掛けずに長距離の、しかもチップ迄はずんでくれた上客を無事に送り届けて来た帰りともなれば、自然と目尻は下がりその口許には笑みさえ浮かべていたのでした



そんな心境の彼だからこそ、不自然な時間にバス停留所附近で手を上げた女性の横に、タクシーを停めたのでしょう

そして彼はその為に、長年勤めたタクシー会社辞める事になったのです





『本当についてたな…全く観光客様々だよ』

そんな独り言を呟く彼の視界に、ハイビームのヘッドライトを遮る白いモノが映ったのは、偶然だったのでしょうか?

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