誰かに聞いた怖い話
・・・疑惑から疑心へ10
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『そんな事件…あったかな?』

僕の記憶の中には、思い当たる事件の記憶は存在していませんでした



『いえ、事件じゃなくて事故です!確か…キャンプに来ていた家族連れが、土砂崩れに巻き込まれて…』

彼は更に続けました



『だから、彼女が此の四駆を借りさせたのも、その事と関係があるんじゃないかと…』



『…そうか、そんな事故が…』

それでも僕は、その事故について思い出す事が出来ませんでした



『覚えて無くても仕方が無いですよ、丁度その頃は日本の各地で、色々な事件や事故が連日の様に起きていたし…それより僕はこう考えていたんです』



『?』



『此の四駆なら、車止めの無い場所からキャンプ場の中に入れるじゃないですか…それにウインチがあれば、いざと言う時に使えそうだし…でも…彼等に何事も無ければ、それが一番なんですけどね…』



『…そうだね』

助手席の後輩の言葉に何処か釈然としないものを感じながらも、僕はそうあって欲しいと願いを込めて頷いたのです



『きっと大丈夫ですよ!今晩は皆で呑みましょうよ、先輩には色々と教えて貰わなきゃ』



『…』

此の時僕は、本当にそう願っていました

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あきゅろす。
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