誰かに聞いた怖い話
・・・疑惑から疑心へ6
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『おーい、戻ったぞ』

その場に友人の誰かの声が響く迄、私も病院長の息子も気まずそうに押し黙ったままでした



そんな私達二人の間に流れる、微妙な雰囲気に気付いたのか気付かなかったかのか…

焚き火の側に近付いた旅行好きの彼が、笑いながら言ったのです



『どうしたの?男同士で愛の告白でもしてたのか?』



『…君もか…』

私はその時、呆れ果てて何も言えない…そう言う態度を彼等に示し、焚き火の側にぼんやりと佇むサーファーの横を通り抜け様としたのです



『あっ!』

次の瞬間、私は何かに躓き倒れ掛け、気付いた時にはサーファーの彼の腕の中にいたのでした



『しかし、本当に華奢だなぁ…そんなんじゃ、女にモテないぞ…もっと鍛えろよ』



『…あ…りがと…』

私はあの時、そう言いました

私の曖昧な記憶の中で、その事だけははっきりと覚えています



『おぃ、待てよ!僕を置いて行くのか!』

そして私は、病院長の息子の間の抜けた叫び声と友人達の笑い声を後ろに聞きつつ、その場から小走りに駆け出していたのです





『大丈夫か?お腹でも壊したのか?』

その声は突然個室の前から掛けられたのでした

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