誰かに聞いた怖い話
65話…疑惑から疑心へ
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その場の八つの瞳が音のする方角を…焚き火の揺らめく炎に照らし出された、彼の事だけを見つめていました



♪♪⌒♪♪♪⌒♪…



皆の視線を一身に集めたサーファーの彼は、シャツの胸ポケットに滑り込ませた薄手の携帯電話を右手で取り出すと、サブディスプレイに表示された文字を黙って見つめていたのです

そして意を決した様に携帯を開くと、その場から立ち上がり、焚き火の側から離れながら電話に出たのでした



『…うん、大丈夫だと…けど、調べて…から…電話します…それじゃあ』

決して聞き耳をたてていた訳では無いのですが、湖から吹き付けた強い風に乗って、彼が電話の相手と二言三言交わした短い会話の一部が、焚き火を囲む私達の所迄聞こえて来たのです

けれども彼は、その事には全く気付いていない様子で、私達に向かってこう言ったのでした



『すまん、弟からだったよ…修理に出していたボードが直ったから取りに来いって、ショップの店長から電話があったってさ』

そしてこうも告げたのでした



『帰りに取りに寄れるかなぁ…一寸車迄行って、バックの中に預かり証が入ってるか調べて来るよ…俺の事は気にせずに話を続けていてくれよ』

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