誰かに聞いた怖い話
・・・百人浜12
.
…さっきのは…俺の見間違いか?

彼はそう頭の中で思いながら、溜め込んだ息をすーっと吐き出したのです

此の時の彼の頭の中には、恐怖と言う感情は存在しませんでした

彼の頭の中にあったのは、ただ純粋な興味だけだったのです





『結局の所、ソレの正体は何だったの?』

そう尋ねたのは、病院長の息子でした



『うーん…俺が目撃した訳じゃ無いからな…』

サーファーの彼は誰にともなくそう呟いた後、旅行好きの彼に向かって尋ねたのです

『お前はどうなんだ?』



『僕?』



『ソレの正体について、お前は何か聞いてるのか?』



『うん…まぁ、どの話が本当なのか、僕には分からないけど…恋人との結婚を反対されたアイヌの娘が、故郷の村も…娘への想いも捨て去り一人海を渡った男を、一途に想いながら身を沈めた沼だと言う話や…』

『難破した船と運命を共にした夫が打ち上げられた浜に、女の身ながら訪れた若妻が力尽き倒れた場所が、その沼のほとりだったとか…』

『こんな説もあるんだ…その女は、実は妖怪で…沼のほとりに男を誘い込み、男の生気を貪り尽くす…そして、生気を搾り取られた男は、間も無く亡くなってしまう…と』

[前頁へ][次頁へ]

39/99ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!