誰かに聞いた怖い話
・・・百人浜9
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都会では中々見られ無くなった、星々の瞬く澄み切った夜空を彼は見上げながら、大きく一つ息を吸い込み、そして身体の中に溜め込んだ色々なモノと一緒に、煌めく星空に向けてゆっくりと吐き出したのだった



色々なモノとは、先日の一件以来しっくりとしない、家族との関係についてだったのか…

それとも、近頃すれ違い気味の恋人との関係なのか…

そんな事とは全く関係の無い別の何かなのかは…当人である彼にも分からなかった

そんな…もやもやとした感情を鎮める為、彼はもう一度深く息を吸い込みました





『あの月が出て無ければ…もっと良く見えるのに…』

首が痛くなる程ずっと星空を見上げていた彼は、そう呟きながら視線をゆっくりと下げたのです

その彼の瞳に映る物は、夜空に瞬くスパンコールの様な星々から…月明りに照らし出されてキラキラと光る波へと、その姿を変えてゆきました

彼は海鳴りに誘われるまま、その白く光る海に向かって歩き出しましたが、その砂浜の悲劇が不意に彼の脳裏に浮かび上がり…彼は足を止めたのです

そして彼は、それ以上海には近付こうとはせず、渚と一定の距離を保ちつつ海岸線に沿って夜の砂浜を歩き出したのでした

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