誰かに聞いた怖い話
・・・百人浜6
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『なぁ…気が付かないか?』

彼の話に出て来る場面を丁度頭に描いていた私は、不意に向けられたサーファーの彼の問い掛けに対して、直ぐに反応する事が出来ませんでした



『おぃ、俺の話を聞いていて、何か気付かなかったか?』

彼はキョトンとしている私に、再度同じ問い掛けをしたのです



『?』



『お前達は気付いたろ?』

急に変わった話についていけない私を尻目に、彼は隣りに座る仲間達に問い掛けました



『勿論、分かるさ』

『僕は直ぐに気付いたよ』

『…』



『君も…分かったの?』

即答する友人達の中で一人無言だった車好きの彼に、未だ答えを分かり兼ねる私は尋ね掛けました



『…』

けれども彼は、さっきと同じ様にただ頷くだけだったのです



『歌だよ…さっき俺が言ったろ…問題になってる歌に出て来る岬だって…あれ、違うから』



『?』

ただ一人彼の言っている意味が分からず、困惑気味の私を見つめる友人達の顔には、そのいずれにも微かに笑みが浮かんでいました
けれども、その表情には嘲笑や蔑みと言った感じは、全くしなかったのです

自分の弟や妹に向ける様な…本当に優しい目差しでした

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あきゅろす。
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