誰かに聞いた怖い話
・・・百人浜5
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『その砂浜に隣接する様にして、結構広めのオートキャンプ場があるんだ…そのキャンプ場の名前は、似た様な名前が沢山在って、今は一寸思い出せないんだけど…まぁ別に良いよな』

『人から聞いた話によると、どうやらその近くに沼があるそうなんだが…あっと言う間に過ぎ去る北国の短い夏を楽しむ為に、夜なお明るいネオンの街からあの地を訪れた俄かキャンパー達の中には、その姿を見掛けてしまう人が…毎年幾人かは居ると言うんだ…』

そして彼は、カップの中身をぼんやりと見つめながら話し続けた



『俺に話してくれた人も、その中の一人さ…その晩彼は……』





その晩の気候は昨日迄とは全く違い、やけに蒸し暑く感じたかと思えば…ほんの数分後には肌寒ささえも覚える、そんな奇妙な晩でした

もしかするとそれは…日中火傷する程熱せられた大地から吹く風と、海から吹き付ける湿った潮風が、此の砂浜で戯れながら混じり合い作り出した、その場限りの異常な空間だったのかも知れません…



彼が此の砂浜に車を停めてから、もう数日が経とうとしていました

その日彼は、ベットの枕元に置いた腕時計の針が、一本に重なる頃になっても未だ寝付けずにいたのです

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