誰かに聞いた怖い話
・・・羊頭狗肉13
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腐った血肉混じりの土がこびり付いた私の着物も、お風呂で綺麗に洗い流された私同様お湯で絞った手拭いで目立たぬ様に拭き取られ、その様子を爬虫類の様な瞳でじっと眺めていた肉屋の店主は、近所の町工場で働いている私の母親が仕事を終えて帰宅する時間を見計らい、私を迎えに来る様に言付ける為に加工場で働く従業員を私の家へと走らせたのでした





『申し訳ありません…此の娘にはよーく言い聞かせますので…ほら、お前も謝りなさい!』

でっぷりと太った肉屋の店主を前にして、母のごつごつした手で畳に頭を押さえ付けられながら、私は泣きじゃくっていました

勿論その時の私の感情は、悔悟から来る気持ちよりも…恐怖心の方が勝っていた事は言うまでもありません

そして私は既に暗くなった夜空に瞬く星々を見上げながら、その記憶を封印したのでした





『…それで、その…大丈夫だったのか?』

当時の嫌な記憶を思い出し言葉の歯切れが悪くなった私に、夫が遠慮がちに尋ねて来たのです



『えっ?』



『だからさ…その…えっと…何もされなかったのか?その…変な事は…』



『!』

その時私は、夫の遠慮がちな言葉の意味に気付いたのです

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あきゅろす。
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