誰かに聞いた怖い話
・・・羊頭狗肉12
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『こんなに腫れちゃって…でも、あんたが悪いんだよ!人の敷地内に勝手に入り込むから』

肉屋の自宅のお風呂場で、私の顔や髪の毛にこびり付いた汚れや鼻血の後を、洗面器一杯に張ったお湯で洗い流しながら、肉屋のお女将さんが呟きました



『…』

私はズキズキと割れる様に痛む頭と頬の痛みに堪えながら、彼女のするがままに身を任せていたのです





あの時私は穴の縁の汚れた地面へと、肉屋の店主に力任せに張り倒されたのです

そして店主は私を加工場へと引き摺り込むと、コンクリートで固められた冷たい床に正座させ、近くで仕事をしていた従業員に、肉の解体用の大きな肉切り包丁を持って来させたのでした



私は十数年経った今でも忘れません…あの時肉屋の店主がその手にした大きな肉切り包丁を、私の目の前に此見よがしにちらつかせながら私を見下ろし脅した事を…言った言葉を…



その時私は誓わせられたのです

此所で見た事は誰にも…そう、私の両親にさえ喋らないと…

そしてこうも言われたのです

もし誰かに喋ったならば、私をメンチカツの材料にしてしまうと…



勿論、私は誓いました

此の日の事は、決して誰にも喋らないと…

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あきゅろす。
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