誰かに聞いた怖い話
・・・羊頭狗肉9
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その彼女の呟きが聞こえたのか、それとも聞こえ無かったのか…

炬燵に横になりながらニュースを観ていた彼女の夫が、独り言の様に呟いたのです



『全く…ふざけた奴だよな!』

『安い外国産の輸入肉を使って置きながら、国産の高級肉だって売ってたんだからな!こいつらみたいな奴が居るから、業界全体の信用を無くすんだよな』



『もっと酷いわ…』

夫の言葉に続いて発せられた彼女の言葉は、今度は彼女の夫の耳に届いていました



『んっ、知ってるのか?こいつの事…』



『えぇ…あなたも多分知ってる筈よ、あの…小学校へと向かう道の途中に在った、大きな肉屋…あそこの店主よ』

彼女は夫にそう答えたのでした



『あぁ!あの坂の途中の…左側に在った肉屋だろ?』



『えぇ、そう…そこよ』

この時テレビの画面の方を向いていた彼女の夫は、彼女の顔に浮かび上がった怯えとも怒りともとれる表情には、未だ気付いてはいませんでした



『あそこのメンチやコロッケ、旨かったんだよなぁ』

『俺なんかさぁ、小遣いに余裕がある時は、あそこで三つ位買って食べたんだぜっ!』

彼女の夫はそう言って、舌なめずりをしたのでした

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あきゅろす。
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