誰かに聞いた怖い話
・・・山越えの道9
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『よーし、巻き上げて!ワイヤーが切れない様にゆっくりとな…そうそう、そのまま』

先輩の的確な指示に従ったお陰か、山越えの道を塞いでいた倒木は、ズリッ…ズリッとアスファルトをこそぎ落とす様にその位置を変えてゆき、車一台が通るには十分な空間を作り出していたのでした



『これだけあれば通れますよ、早く行きましょう』

早く兄達の下へ行かなければと気が急く僕の心を鎮める様に、彼女は一言こう言ったのです



『駄目よ!せめて道路の端迄退かさなければ、誰かが事故を起こしちゃうかも知れないでしょ』

そして彼女は、こうも告げたのでした

『こういう所で命を落とした者は、後々自縛霊とかになって他の人を巻き込むのよ…ほら、そこにも一人立って居るでしょ!額から血を流した若い男の子が…』

僕はそれ迄全然気付いていなかったのですが、彼女が指し示したその場所には小さな古ぼけたお地蔵様が一体、寂しげに立って居たのでした





『さぁ!先を急ぎましょ』

漸く邪魔な倒木を動かし自分の車に戻った僕は、彼女が車に乗り込みシートベルトを締めるのを確認すると、ギアをニュートラルからローに入れ、サイドブレーキに手を伸ばしたのです

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あきゅろす。
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