誰かに聞いた怖い話
・・・山越えの道7
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ゆっくりと慎重に進む四駆の後を、十分な車間距離を保ちながら僕の車が続いて行きました
彼女に注意されるでも無く、四駆よりも車高の低い僕の車では、いやが上でも細心の注意を払わねばならなかったのです
薄暗い車内には先程からの軽快な音楽が流れるだけで、彼女は前方を…彼氏の乗った四駆の進む姿をただ黙って見つめ、余計な事は一言も喋りませんでした
でも…それが、女性に対して多少口下手な僕にとっては、有り難い事だったのです
ましてや、慎重な運転を要求されるこんな面倒な山道では、尚更集中したいのです
『停めて!』
急に車内に響き渡る彼女の声よりも早く、僕は既にブレーキペダルを踏み込んでいました
急な左カーブを曲がった先に、四駆の赤いテールランプが停まっていたからでしたが、彼女に十分注意されていた為、大事には至らなかったのです
『どうしたの?』
僕は運転席側のウインドーを下げ窓から頭を出し、四駆の側に佇む黒いシルエットに向かって声を掛けました
『木が倒れていたんだよ!彼女に注意をされて無ければ危なかった所だよ』
先輩らしきシルエットが、こちらに歩み寄りながら答えたのでした
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