誰かに聞いた怖い話
54話…ミーコ
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『さぁ、次は君の番だよ』
彼は手に取ったマグカップを、右手で丸く円を描く様に揺らしながら、隣に座る走り屋の彼にそう言ったのでした
『猫の話か…それじゃあ俺も、友達に起こった話をするかな…あれは確か………』
その日俺は、待ち合わせの約束をした馴染みの喫茶店で、その店の一押しのメニューのモカを飲みながら、待ち合わせの時間を遥かに遅れていながら、いまだ姿を現さない友人を少しいらつきながら待っていた
もう何度目だろう…この店の時計に目を向けたのは…
カラン…
その時だった
店の入口のカウベルが鳴ったのは…
この店では来客を知らせるベルに、本来牛の首につけるべきカウベルを、手直しして使っていたのだった
その音色に誘われて、これで何度目か分からぬ程入口の方を振り向いていた俺の目に、彼奴の姿が漸く映ったのだった
店の入口には、真っ青な顔色をした彼奴が、ドアを背にして立っていたんだ
そして、虚ろな目をした彼奴は、ゆっくりと辺りを見回し俺に気が付くと、ふらふらと頼りない足取りでテーブルに近付いて来て、喉から絞り出す様な声で言ったんだ
『ミーコが……ミーコが…さっき死んだって』
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