誰かに聞いた怖い話
・・・三毛猫3
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『いつもは、二匹並んで微笑ましい姿を見せる猫達が、その日を限りに一匹しか姿を現さず、しかも…その一匹も、いつものおっとりとした態度とは異なり、小さな物音一つすら聞き漏らすまいとするかの様に、耳をピンと立て辺りをキョロキョロと落ち着きの無い様子で見回し、全身の神経を張り巡らせて何かを捜している様だった…』
『いや、びくびくと何かに怯えている…そう言った方が良いかも知れない…』
『今日はお前だけかい?もう一匹はどうしたんだい』
そう尋ねる入院患者に猫が答える筈も無く、季節の移ろいと共に、いつしか一匹の猫の事は忘れ去られ様としていた
けれども、病院の近くで起こったある事故を発端にして、突然姿を消した猫の消息がわかる事になる
…バックシマス…ゴチュウイクダサイ…ピーッピーッピッ…バックシマス…ゴチュウイクダサイ…ピーッピーッピッ…バ…
ガリッ…
無機質な音声が流れる中、後ろを見ながらトラックをゆっくりと後退させていた運転手は、何か小さな物に乗り上げた様な振動をハンドルに感じていた
そしてその直後に聞こえた、何かを押し潰した様な鈍い小さな音に、彼は経験上思い当たる節があったのだ
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