誰かに聞いた怖い話
・・・古都20
.
『おい、こっちだぞ』



『…』



『おぃ…しょうがないなぁ』



『……』

『これは…?』

友人の言葉などまるで聞こえない様に、その門をくぐってから僕の足は、敷地の一番奥の苔むした粗末な古い石塔へと、知らず知らずの内に向いていたのだった



『…?』

そんな僕の後を、友人は諦めた様に黙ったままついて来ていた



『…これは何の石塔なんだろう…?』



『それは…』

ふと聞き慣れない声を耳にして、僕は後ろを振り返っていたんだ

そこには見慣れない一人の男が、微笑を浮かべて立っていた



『あなたは?』



『ここの住職さんだよ、このお寺の由来なんかを聴かせて頂こうと、さっき御願いしたんだ』



『お若いのに、御仏の事に興味があるとは感心感心、それじゃあ…このお寺の由来から話しますかな?』



『あ…はい、宜しくお願いします』

僕はその時気付いていた、友人はきっと僕が歴史や仏教の事を調べているとか嘘八百を並べて、この住職を信用させたに違いない事に…

けれども僕は、住職に申し訳なく思いながらも、友人の話に調子を合わせる事にしたんだ





『…と言い伝えられております』

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あきゅろす。
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