誰かに聞いた怖い話
・・・古都16
.
『いや…何でも無いよ』

(夢なのか?)



『そうか…身体の具合はどうだ?』



『…うん、大丈夫みたいだよ…もう』

(あれは…本当に夢だったのか?)



『そうか、そいつは良かったな…起き上がれるか?』



『ああ…』

(夢…だよな…でも…)



『今日も泊まって行くだろう?』

『お袋が、旨い料理を作ってくれるそうだから』



『いや、帰るよ』

僕の口から、無意識の内に出た言葉だった…



『遠慮するなよ、また具合が悪くなると大変だから、泊まって行けよ』



『ごめん…明日どうしても外せない用事が…』

さも残念そうな表情を見せた彼に、僕は続けて言ったのだ



『そうか…それじゃあ仕方ないか…じゃあ、駅迄送って行くよ』



『うん、済まない…頼むよ』



『わかった、それにしても残念だなあ…』



『又、来るよ必ず』





『本当に御世話になりました』

僕は、先に居間に戻っていた彼の両親に挨拶をして、友人の家を後にしたのだった





『又…来いよ、今度はもっとゆっくりとな』



『ああ』

鳴り止むベルの音と共に閉まるドア越しの会話が、彼との別れの言葉だった

[前頁へ][次頁へ]

36/97ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!