誰かに聞いた怖い話
・・・古都16
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『いや…何でも無いよ』
(夢なのか?)
『そうか…身体の具合はどうだ?』
『…うん、大丈夫みたいだよ…もう』
(あれは…本当に夢だったのか?)
『そうか、そいつは良かったな…起き上がれるか?』
『ああ…』
(夢…だよな…でも…)
『今日も泊まって行くだろう?』
『お袋が、旨い料理を作ってくれるそうだから』
『いや、帰るよ』
僕の口から、無意識の内に出た言葉だった…
『遠慮するなよ、また具合が悪くなると大変だから、泊まって行けよ』
『ごめん…明日どうしても外せない用事が…』
さも残念そうな表情を見せた彼に、僕は続けて言ったのだ
『そうか…それじゃあ仕方ないか…じゃあ、駅迄送って行くよ』
『うん、済まない…頼むよ』
『わかった、それにしても残念だなあ…』
『又、来るよ必ず』
『本当に御世話になりました』
僕は、先に居間に戻っていた彼の両親に挨拶をして、友人の家を後にしたのだった
『又…来いよ、今度はもっとゆっくりとな』
『ああ』
鳴り止むベルの音と共に閉まるドア越しの会話が、彼との別れの言葉だった
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