誰かに聞いた怖い話
・・・古都14
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少しうつ向き加減の彼の顔は、不意に吹き過ぎた一陣の風に煽られて、揺らめきながら激しく燃え上がる炎に照らし出されているにも関わらず、何故か蒼白く生気に乏しい表情に見えたのは、私の見間違いだったのだろうか…

そして彼は…再び話し始める…





『布団に寝ていた僕の身体を、布団から生えた…そう、地面から青竹が生えて来る様に、布団から生えた無数の腕が、僕の身体をギュッと掴んでいたんだよ』



『…』



『それも…肉が削げ落ち、骨と皮だけになった様な…無数の腕が…』

『僕の身体を掴み取り、地の底に曳きずり込もうと……いや、それは違うのかも知れない』

『あいつらは、自分達が暗い地の底から這いずり上がる為に、僕の身体にしがみ付いていた…そんな気がする』





『だから言っただろう…無駄だって…』

『俺達一族の積年の怨みも、お前の首を塚の前に供える事で、やっと晴れるんだ』

不意に立ち上がった彼の手には、いつの間に手にしたのか、白木の鞘に包まれた一振りの刀が握られていた

そして彼は刀を引き抜き、彼を見上げる僕の首筋に向けて、青白く不気味な輝きを放つ刀身に烈帛の気合いを込めて、振り下ろしたのだった…

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