誰かに聞いた怖い話
・・・古都11
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槍を向けて迫る兵達に背中を向けて、忘れ形見をかばう様に抱きいだいた男の身体を、数本の槍が貫き…

そして又、一本…鋭い穂先が、男の身体を貫き通したのです



『こ、この怨み…か、必ず…や…』

それが男の最期の言葉でした



そして、まだ年端もいかぬ少年は、重たさを増した男の肩越しに、彼に迫る狂った様な顔付きの男達を、その小さな瞳に焼き付けていたのでした





『おい!大丈夫か?』

『どうしたの?大丈夫?』

『大丈夫か?』



『…う、うん…?』

虚ろな視線を周りに漂わせた僕は、視線が定まるのにつれて、心配そうに上から覗き込む友人とその家族に、やっと気が付いたのです

どうやら僕は、友人の部屋に寝かされている様でした

まだうずく頭で起き上がろうとした僕の額には、冷たいタオルがのせられていました

でも…何故ここに寝せられているのかは、僕には思い出せなかったのです



『ここは…いったい何が…?』

まだ少しぼやけた頭で尋ねる僕に、友人は答えてくれました



『全然覚えて無いのかい?』

『昨日、切り通しの所で写真を撮っている時に、急に倒れたんだよ…そして熱を出して、今迄ずっと…』

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あきゅろす。
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