誰かに聞いた怖い話
・・・古都10
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行く手を阻んでいた槍ぶすまが、さっと開けられたのを見た塩売り達一行は、荷車を押し始めたのでした
彼等はつい先程迄は、己れは討ち死にしてでも忘れ形見を逃そうと、緊張の糸を張り巡らせていたのです
けれども、見逃して貰える…そう思った事で、張りつめた糸が切れる様に、周囲へ配る警戒心も薄れていたのでした
『うっ!』
彼等が前方に開かれた隙間を、荷車を押しながら通り過ぎた時でした…
荷車を押す彼等と共に、関に向けて小走りに走り出した塩売りは、短く低い声をあげるとその場に立ち尽くしたのです
彼等の前方には、槍を構えた新たな手勢が居並び、関への道を閉ざしていました
そして唇から赤い糸を引きながら、塩売りは地面に転がっていたのです
彼は既に事切れていました
彼の背中には、まるで地面から真っ直ぐ生えたかの様に、数本の細竹が突き立っていたのです
その様子を、驚きの眼で眺めていた彼等の退路を阻む様に、先程彼等を通した兵達が槍を再び構え、彼等を取り囲んでいたのです
『おのれ〜!騙したな!』
憤怒の表情で、荷車に隠した刀を取り出そうとした彼等の身体に、兵達の持つ槍が容赦無く突き立てられたのでした
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