誰かに聞いた怖い話
・・・古都8
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『ひぇ、い…命ばかりは…』

塩売りは腰を抜かしたのか、尻餅をついたまま後退ろうとしていたのでした



『慌てるな、儂じゃ』

お堂裏から飛び出した彼等は、彼等の姿に驚いて逃げ散ろうとする、荷物運びの行く手を遮り…

その中の一人が、塩売りに近寄りながら話し掛けたのです



『…?』

『その声は…若しや…』



『そうじゃ、実はな……』





彼等の立てた計画は、至極簡単なものでした

塩売りの荷物運びの者達と入れ替わり、関をやり過ごす…と云う策だったのです

勿論、その程度の嘘が直ぐにばれるのは、承知の上の事でした

彼等には、一つの勝算があったのです

勿論…低い確率ではありましたが…彼等はそれに掛けたのでした





『待て!ここは通せぬ、今日は駄目じゃ!』



『そう言わずに、お願い致します、今晩中に帰りたいのです』

塩売りはいつもの様に、その切り通し脇の陣屋に詰める侍の一人に、銭を掴ませ関を通して貰おうとしたのですが、今日に限って受け取ろうとはしないのです



『通してやりたいが、今晩はまずいんじゃ』

その侍はそう言いながら、奥の方を気にしていました



『如何致した!』

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