誰かに聞いた怖い話
・・・古都5
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僕はその日愛用のカメラを片手に、古都の朝靄にひっそりと佇む古刹、名刹の姿を求め歩いていた

今年の梅雨は、じとじとと冷たい雨が降り続き、各地での土砂崩れや洪水の被害のニュースが、テレビで流れない日は無い程であった

つい一週間前にも、古都へと繋がる古道跡の近くにある、古い小さな塚の立てられていた斜面が、降り続いた長雨のせいで崩れ落ち、その塚のあった場所から帯ただしい人骨が発見されていたのだった

もっとも、その人骨は茶色に変色し、相当古い年代のモノだと思われ簡単な鑑識の検査のみ行われて、直ぐに粗末な塚石の下に埋め戻されていたのである

ただ…それらが直ぐに埋め戻されたのには、それなりの理由があったのである…余り世間に広めたく無い理由が…





『ここじゃないの?』
僕がその話を最初に聞いたのは、ほんの偶然の事だった

その日僕は、関西旅行中にユースホステルで知り合った彼の誘いで、古都に花咲く七色の紫陽花と、悠久の刻を過ごして来た神社仏閣を巡る旅に来ていた…

昨夜は彼の家に泊めてもらい、彼の家族の温かい歓迎に感謝しつつ、夜には彼の親に内緒で買って置いた缶ビールを、二人で分け合い話を弾ませていたんだ

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あきゅろす。
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