誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝19
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『うちの料理は美味しいんだぜ、遠慮しないで食べてくれよ』

息子は友達にそう言うと、中に居る父親に向かって片目をつむった

『この頃、特にスープが旨いんだ、今日は親父の奢りだから、遠慮しないでおかわりして良いぜ、なぁ親父』

そんな息子の問掛けにも、男の注意は見慣れぬ二人組に向いていて、一瞬スープをこす手がおろそかになっていた

その時、親子の会話に耳をすませていた二人組が、お互いの眼を見ながら微かに頷いていたのに、店主は少しも気付いてはいなかった

それが全てだったのである



ガリッ…

出された料理を食べた、次の瞬間だった

息子の友達が慌てて吐き出した物は、2cm程のモノだった



『何だこれ…?』

そのモノには、普段見慣れた物が生えていたのだ



『まさか……ゆ…び?』

息子の友達は信じられないという表情で、一度店主の顔を見つめると外へと飛び出し、胃の中の物を吐き出している様子だった

そしてテーブルの上の物を、唖然とした表情で見ていた息子の顔が歪むと、彼も友達の後を追ったのである

そして、見慣れぬ二人組の男は、込み上げて来る吐気を抑えながら、ゆっくりと店主に近付いて行ったのだった…

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あきゅろす。
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