誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝17
.
そして三度目の来訪は、それから僅か二週間後の事だった

アイツは俺の渡した金を…俺が汗水流して稼いだ金を、たった二週間程で博打に…薬に…と、全て使い果たしてしまったのだ

俺はその日、アイツの前に土下座をしながら、どうしてもまとまったお金の都合がつかないと、アイツの足にしがみ付き、一週間の猶予を取り付ける事に成功する



一週間後か…その日俺の息子は家には居ない…この家には俺一人きりだ…これで準備は整った…全て手筈通りだ



後一週間…これであの料理を…夢に迄見たあの味を…俺はもう一度味わう事が出来る



この時、俺の精神は…既に壊れていた

この時、俺の理性は…既に無くなっていた

この時、俺の期待は…どす黒く大きく膨らんでいた…





ザクッ…ザクリ…



俺が持つ幅広の中華包丁が、薄明かりの中で鈍い光を放ちながら、二度程振り下ろされた

生きている内に…頸を切り血抜きをしなければ、活きの良い旨い鶏肉を用意する事は出来ない…

生きている内に…切り込みを入れて血抜きをしなければ、活きの良い旨い刺し身は用意出来ない…

生きている内に…血抜きをしなければ、血生臭いアレになってしまうだろう…

[前頁へ][次頁へ]

17/97ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!