誰かに聞いた怖い話
・・・海岸の兄弟12

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『弟さん、亡くなったんですか?』



涙ぐみ言葉に詰まって何も答えられない男に変わって、女将さんが続きを話してくれた…

『弟さん、あの岩場で自殺しなさったんです……丁度3年後の命日の日に…』

『死に顔は安らかに眠っているようでした…』



『死因は何だったんです?』



『睡眠薬を大量に飲んでいたそうですよ…』



でも、それだと従業員の話した内容と辻褄が合わなくなってくる…

10年前に死んだのは兄の方なのに、何で弟が死んだなんて嘘を付いたのだろうか…

ふと、あの時の従業員の言葉を思い出す…弟は悪戯好きだったと…





俺は帰りの車の中で、従業員の最後に残した言葉に付いて考えていた…

あの時、彼はこう言っていた…

『お二人でお幸せに、弟も「い・つ・も」見守っていると思います』



『それからなんだ…あいつが霊の事を言い出したのは…』



『それって、もしかして彼女に憑いて来たって事ですか?』



『…そうだ』



『それって…どっちがですか……』



『…』



キャンプ場に静寂が戻る…

『俺が先輩から聞いた話しは、ひとまずここまでだ』



『じゃあ、次は僕だね…』

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あきゅろす。
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