誰かに聞いた怖い話
・・・海岸の兄弟6
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そしてその従業員は悲しい話しをはじめたのだった…
『10年前のあの日…あの子は学校から戻るといつものように、あの岩場に遊びに行っていたようでした…』
『本当なら私が一緒に……たまたま、仕事の休みだった私が一緒に行く筈だったのです…』
『けれども、前日から風邪気味だった私は…あの子を1人で行かせてしまった…』
『あの時、無理してでも私が行っていれば何とかなったのかも知れないんです…』
『あの日、あの子はあの岩場で足を滑らして海に落ちて溺れてしまったんです……変に思われるかも知れませんが、海辺に住んでいるからといって泳ぎが得意とは限りません…』
『そうです…あの子は…泳げなかったんです』
そう言って、その従業員は泣いているようだった…
『そうだったんですか……でも何故彼女に悪戯したんでしょう?』
私の問い掛けに、彼は簡単に答えたのだった……
『あの子は悪戯好きでしたから…でも、悪気は無いんで許してやって下さい…』
『では、私は仕事に戻りますので……』
その従業員はそう言うと、俺達に深々と頭を下げて旅館の方に戻って行った…
もう一言気になる言葉を残して…………
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