誰かに聞いた怖い話
・・・海岸の兄弟4
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まだ、誰もいない空間に向かって怒っている彼女を半ば強引に引っ張って、何とか無事に旅館迄戻った俺達だが……、どうやら戻ったのは俺達だけじゃなかったらしい…
『…大丈夫か?落ち着いた?』
『うん………でも…でもね、本当に居たんだよ…男の子…』
『ああ…わかったよ…』
口ではそう答えたものの、俺はまだ本当には理解していなかった…
その夜の事だった…
ふと彼女の呻き声と異様な雰囲気に目を覚ました俺は、彼女の枕元に座って彼女の顔を覗き込んでいる小さな男の子を視界の端に見つけたのだった……
でも、それ以上は何も出来ない…
彼女の為に何もしてあげられない…
俺は指1本動かせ無かった…
男の子はただ、じっと彼女の顔を覗き込んでいるだけだった…
危害を加えようとは決してしない事が、何故だか俺にはわかっていた
どれ位の時間がたったのだろう……男の子の姿が、フッ…と視界から消えると同時に、身体の自由が効くようになった…
いつしか彼女は安らかな寝息を立てていた……
その男の子の事がわかったのは、翌日の朝方…朝日を砂浜で眺めていた時だったんだ……
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