誰かに聞いた怖い話
23話…身近な恐怖(参)
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『結局その女が誰なのか、俺にはわからなかった…でも、今でも思い出すんだ、あの恨めしそうな俺を睨みつける眼を…』
『そうだな、天井なんか普段は見ないからな…寝るときや、鏡や何かに映し出された時くらいしか…』
『風呂で頭や顔を洗っている時って云うのも、なんか…怖く無いか?』
『何か…後ろに嫌な気配を感じても、直ぐには見ることが出来なくて…』
『そうそう!そうして後ろから肩や背中を…そーっと、撫でられたら…』
『ヤメ、ヤメッ!頭洗えなくなる!』
『アハハハハッ…!じゃあ、次は私の番だ』
『私は…鏡…かな?』
『たまになんだ…本当にたまになんだけど…脱衣場にある姿見の大きな鏡の前を通り過ぎる時に、視界の外れ…視界に映るか映らないかの、微妙な部分に男性の足が映る事があるんだ…何と無く男性だと思うんだけどね』
『まぁ…特別怖いと云う訳じゃあ無いけど…やっぱり気になるよね』
『今度皆も見てご覧よ…そっと……もしかしたら、映っているかもね』
『…』
『……』
私の話を、皆が珍しく黙って聞いていたのが、私には少し不思議に思えた…その意味を私が知るのは、まだまだ先の事だった…
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