誰かに聞いた怖い話
11話…ミステリーツアー
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不意に吹き付けた強い風で、ベッドを覆った帳が、まるで人が開け広げたようにサーッと開いてゆく…

『何…?、私は夢を見ているの…?』

私は自分の意思で、唯一動かせる眼をそちらに向けた…





『今日のお泊まりは、こちらのお城の中になります』

『このお城は古くから、この河沿いの小高い丘の上に建ち、回教徒の進軍にも屈せず守り通した由緒あるお城です』

『この辺りの領地を治めた領主は、十字軍遠征に従軍し数々の武勲を挙げ、この辺りの領地を国王陛下より賜ったとされています』

『しかし、代々この辺りを治めて来た領主の一族は、先の大戦以降事業の失敗や身内の不幸が相次いで、領地の悉くを失い…最後にはこのお城迄、銀行の抵当にとられ競売にかけられて現在のオーナーの手に渡り…ホテルとして使われるようになったのです』

『領主は自分の代で、先祖が守り通した領地やお城を失い…あまつさえ輝かしい名誉迄汚した事を嘆き悲しみ、引き渡しの前夜に拳銃で自分の頭を撃ち抜いて自殺したと云う、曰く付きのお城であります』

『では、今回のツアーの成功を願って…乾杯』



『乾杯なんて不謹慎な…』

私は添乗員の挨拶に嫌な気分になっていた…

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あきゅろす。
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