誰かに聞いた怖い話
・・・懐かしい人3
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兄さんの通う大学の学生だと言う彼女に、喫茶店へと呼び出された後、僕は何度も何度も兄さんの携帯電話に掛け続けました
けれども、僕の携帯電話から聞こえて来るのは、兄さんの携帯電話が鳴り続けている事を示す、聞き慣れた呼び出し音だけだったのです
確かに僕は、最初彼女の言い出した不吉な話の、その十分の一も信じてはいなかったかも知れません
けれども、持ち主を呼び続けるその呼び出し音が、僕の心に不安な影を落とし始める迄に、それ程の時間を要する事は有りませんでした
僕は肉親である兄の無事を祈りながら、その同じ頭の中で別の事も考えていました
その事は僕にとっては凄く大事な事だったのです
そう…僕にとっては…
『…』
私はちっぽけな勇気を振り絞り、私の背後を見つめている彼等の視線を追う様に、ゆっくりと振り返ったのでした
『!』
そこに私は見たのです!
焚き火の傍らに座る私の数メートル背後に、ひっそりと佇む一人の人間らしき形のシルエットを…
そしてその人は…先程と全く同じ言葉を繰り返しながら、暗闇の世界から焚き火の炎に照らし出される光の世界へと、ゆっくりと近付いて来たのでした
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