誰かに聞いた怖い話
・・・懐かしい人2
.
…でも、何故?



…何故なんだろう?



…変だよ、どうして兄さんが…



…身内の私に話し掛けるんじゃなくて、どうして彼等に話し掛けたんだろう…



…兄さんと私の友人達は、絶対に面識は無い筈なのに…



…どうして?



…どうして私じゃなくて、彼等に…



後ろを振り向く事すら出来ない私は、同じ疑問を頭の中で繰り返すばかりでした





『先輩、本当に来た道を戻って良いんですか?』

『兄ちゃんの友達が買い出しか何かの用事で、兄ちゃんの車を借りて使っているのかも知れないじゃ無いですか』

『それか…キャンプ場の外れにテントを張っていたのに…こんな酷い土砂降りだし…僕達がそれに気付かなかっただけなのかも…』

『いや!もしかすると…此の酷い雷雨で落雷の危険を感じて…テントを慌てて撤収し、何処か…そう!ファミレスにでも移動したのかも知れない…』

『今頃きっと、熱いコーヒーでも飲みながら、皆でわいわいやってますよ』



僕は助手席に座ったきり、一言も喋らない彼女に向かって、楽観的な自分に都合の良い事ばかりを並べ立てていたのです

不安な心の僕には、もうそれしか残されてはいませんでした

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あきゅろす。
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