誰かに聞いた怖い話
・・・届かぬ思い3
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『実はな…此所のキャンプ場に来る前日に、彼女の夢を見たんだ』

『それが酷く生々しい夢で…刺さってるんだ…』



『?』

不意に喋り出した彼の言葉は、折からの強風に遮られ、思わず風下へと顔を背けた私の耳には、途切れ途切れにしか届かなかったのです



『ヒビが広がり、真っ白に変色したフロントガラスから生えた幾本もの鉄の棒が、助手席に座った彼女の身体をシート毎貫き、彼女の身体から噴き出す鮮血が見慣れたダッシュボードを赤く染め…彼女の身体から流れる赤い液体が、その棒を伝い流れ…』

『彼女の見開かれた双眸は、自分の身に起きた異変に何も気付かぬまま事切れた事を、物語っているみたいだった』

『その夢の中で、彼女は死んでいたんだ…』



『そんな…でも、それは君が見た単なる夢の話だろう?』

『そんな事は有る筈無いさ…それはきっと逆夢だよ!』

『そうさ、きっと彼女から連絡が有るんだよ!』

私は気付いていました

車好きな彼を慰めているのが、私だけだと言う事に…

あれ程、仲間意識の強かった友人達が、仲間の話に何一つ言葉も掛けず沈黙を続けていた事に…

私はその異変に気付いて、胸騒ぎを抑える事が出来ませんでした

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あきゅろす。
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