誰かに聞いた怖い話
89話…穏やかな海
.
『私の話は終わりだよ』



『随分と中途半端だな、お前は何か見なかったのか?』

喋り疲れて渇いた口にマグを運ぼうとしていた私には、サーファーの彼が投げ掛けた質問の意味は直ぐに分かりました

けれども、私は分からない振りをして、彼に尋ね返したのです



『何がって…何が?』



『だからさぁ…その部屋で、何か変なのを見なかったのか?』

私には分かっていました

いいえ、私で無くとも分かった筈です

その部屋に棲み着く異質なモノの存在に、私が気付いたのか、それとも気付かなかったのか…



『いや…彼女の部屋の中に、何かが居着いているとは思えない…そんな感じじゃ無くて、毎日そこを通り抜けている様な…そんな気がしたんだよ』

確かに私には、そう感じられたのでした



『ふぅーん…まぁ良いや、次は俺の順番だな』

『海ってさぁ…怖いよなぁ…その日その日によって、全然違う顔を見せるし…今の今迄凪いでいたかと思うと、急に猛々しくなったり…本当、海って生き物じゃ無いかと思う時があるよ…大きな大きな生き物じゃ無いかってな……』





その話は多分知ってる人もいる筈だ

以前心霊番組で放送されていたから…

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あきゅろす。
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