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novel2
1
「見ろサウンドウェーブ。あの新兵器さえ完成すれば、憎きサイバトロンどもを叩き潰すことができるぞ」
 
巨大な画面に映し出される新型兵器の完成予想図を眺めながら、デストロンのリーダー、破壊大帝メガトロンは満足げな声を出す。

この新型兵器が完成すれば、デストロンの悲願である打倒サイバトロン、そして宇宙征服の夢へと一歩近づくのだ。
 
そんなメガトロンの隣で話を聞いていた情報参謀サウンドウェーブも、心なしかいつもの無表情をほんのりと緩めているようだった。

「あと数日もすれば完成だ。そしたらまずはテストをせねばな。サウンドウェーブ、コンドルとジャガーを出して、新兵器のテストに最適な場所を探させて来い」
「了解、メガトロン様」
 
サウンドウェーブはそう言うと、部下であるコンドルとジャガーを呼び出し、テスト場所を探しに行かせた。ちょうど他のカセットロンたちも出払っているため、これでこの部屋にいるのはサウンドウェーブとメガトロンの2人だけとなった。
 
完全に2人きりになったためか、メガトロンは緊張の糸を緩め、新型兵器の完成図や、その威力について書かれたレポートを愛おしそうに見つめている。だが不意にサウンドウェーブの方へ振り向くと、何やら嬉しそうな口ぶりで語りかけてきた。

「お前は無駄口を叩いたり、下手に騒ぎ立てることもしないから、一緒にいると実に心地がいい。まったく、お前のように慎み深く、レーザーウェーブのように忠実な者が、このデストロン軍団の中にいればよいのだがな」

感傷的にそう言って、重々しくため息をつくメガトロンに、サウンドウェーブは静かにうなずく。

「スタースクリームの奴がもう少しでしゃばるのをやめれば、少しはマシになるのだがな。まあ無理な話ではあるが……」
 
一度始まったメガトロンの愚痴はなおも続き、なかなか終わる様子を見せない。だがサウンドウェーブはそれを疎ましく思うどころか、むしろ自分に何もかもを打ち明けてくれているような気がして、内心満更でもなかった。
 
やがて話がひと段落つくと、メガトロンは製造現場を見に行こうと言い出し、サウンドウェーブもそれにつき従おうとした。
 
ところがその時、なんの前触れもなく扉が開いたかと思うと、一人の来訪者が中へと飛び込んできた。

「おいメガトロン! 今日こそはお前にリーダーの座を降りてもらうぜ!」
 
勇ましくそう言って銃を構えているのは、航空参謀のスタースクリームだ。

「何を寝ぼけたことを言っておるのだスタースクリーム」
「寝ぼけたこと? 寝ぼけているのはお前の方だ。老いぼれはさっさと墓場で寝てな」
「ほざけ、お前ではワシどころかコンボイにすら勝てはしないぞ」
「ふん、コンボイなど俺の敵ではない。それにあの新兵器が完成した時点で我々の勝利は約束されたようなもの。貴様はすでに用済みなんだよ!」
 
言うやいなやスタースクリームは銃から光線を発射した。しかしその動きを見切ったメガトロンは素早く攻撃を回避し、反撃とばかりに融合キャノン砲を放つ。
 
メガトロンの攻撃は、予想外の反撃に反応が遅れたスタースクリームに見事命中し、激しい衝撃とともにスタースクリームを背後の壁へ叩きつけた。

「この愚か者め、そう簡単にワシを倒せるなどと思い上がるな」
 
苦しげな表情でうめき声を漏らすスタースクリームを見下ろしながら、メガトロンは不機嫌そうに吐き捨て、荒々しい足取りでその場を後にした。
 
残されたのは倒れたままのスタースクリームと、ずっと黙ったままのサウンドウェーブの2人だけ。するとダメージから立ち直ったスタースクリームは緩慢な動作で体を起こし、メガトロンへの恨み言を漏らした後、サウンドウェーブの方を見た。

「サウンドウェーブ、起きるのを手伝ってくれ。体に力が入らないんだ」
「断ル」
「断るだって? なに拗ねたガキみたいなこと言って……おい、ちょっと待てよ、本当においていく気か?」
「サウンドウェーブ関係ナイ」
「……さては俺がお前とメガトロンの邪魔をしたから怒ってるんだな?」
 
一瞬、サウンドウェーブの動きがぎこちなく止まった。

「なんだよ、図星か?」
 
冗談交じりに笑うスタースクリーム。ところがサウンドウェーブはどうやら本気にしているようだった。その証拠に、余裕のなさがあの無表情に表れている。
 
スタースクリームもまさか冗談で言ったことが本当だったとは思わず、驚いたように固まっていた。気まずい雰囲気の中、サウンドウェーブはそれを振り切るように踵を返し、足早にこの場から立ち去ろうとする。

「ま、待てっ、今のは冗談だ! お前とメガトロンの関係がどうだなんて俺も全然興味はない、だから起こしてくれ!」
 
慌ててサウンドウェーブを引き留めようとするスタースクリームだったが、その言葉は明らかに逆効果だった。今度こそサウンドウェーブはスタースクリームの方を見ることなく、部屋を出て行く。

「おいっ……本当に行きやがった」
 
スタースクリームの声は無視され、サウンドウェーブは部屋を出ていく。
 
ひとり残されたスタースクリームだったものの、不思議と怒りは湧いてこなかった。その代り奇妙な脱力感が、疲れた体にドッと押し寄せていた。

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あきゅろす。
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