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ext
となり___復活*1827



「雲雀さんの隣は、俺の場所ですからね」


君の、最後の言葉。
さして気にしちゃいなかった。
最後だなんて、知らなかったから。








キラキラとなり









ぱたぱたと急いで走ってくる音がする。

…あ、転んだ。

思わず緩んでしまった口元に気付き、慌てて見えないように手を添えた。
誰もいない部屋の中で一人、何をしてるのかとため息が出る。

ほんのつい最近まで、まったく笑えなかったのに。




綱吉がいなくなってからというもの、組織内の雰囲気は最悪だった。

悲しみと怒りと恐怖。
負の感情が全てを支配していた。

そんな状況のまま1週間が経ち1ヶ月が経ち、ボンゴレはこのままミルフィオーレに壊滅させられるのだと誰もが思っていた。

他の守護者達は頑張ってたみたいだけど、そんなひとかけらの力でどうにかできるほどミルフィオーレは小さくない。

白蘭とかいうやつが出てきてからも、綱吉がいたなら希望があった。
だが、その綱吉もいない今となってはもう流れに身を任せるしかないのだ。
そんな空気が組織内を漂いはじめ、それは暗く淀み日ごとに増していった。

もう崩壊へのカウントダウンを黙って聞いているしかない。


それほどに、ボンゴレは弱っていた。

そんな中にふいに射した光は、とても頼りなく、今にも崩れそうだったけれど

それでも




「ひ、雲雀さ…っ!遅れてすいま、せ」



君は今、僕の目の前にいる。

手を伸ばせば届く距離に。





「……ひばり、さん?」

僕が何も言わないのを怒っているのだと思ったのだろう。
眉を下げおどおどしている彼を見て、この10年で彼も変わっていたのだと感じた。

ずっと傍にいて、傍にいすぎて気付かなかったこと。
アタリマエになってしまっていた、君の居場所。

気付けばいつだって君は隣にいたのに。


「やっぱりここが1番落ち着きます。」


仕事をしている僕の隣でにこにこしてへらへらして、たまにそんなことを言ってきて

それがアタリマエになっていた。


最後の日すら、君は。



その言葉に込められた意味に僕が気付いたのは、全てが終わってからだった。


隣にできた虚空を見つめ、いつのまにか1ヶ月が過ぎていた。

僕の隣が1番だと言ったのは君なのに、どうして今君は暗い森で独り眠っているのだろう。
そんなことばかり考え、棺の隣で無意味な日々をすごして。




それなのにほんの少し傍を離れたその瞬間に、君は帰ってきた。

ずいぶんと、弱く小さくなって。



10年前の君なんだから、もちろん僕と過ごした日々をおぼえていない。
僕に会いに来るのもすごく遅かったし。


最初はちょっと咬み殺そうと思ったけど、戻ってきたから許してあげる。

僕は君よりも強いから修行にも付き合ってあげる。

君がミルフィーレに乗り込むと言うのなら協力してあげるから。




だから、もう二度と

僕の隣からいなくならないでね。



あの言葉をもう一度聞ける日はいつになるかわからないけど、今度言うときは、あんな意味込めないで。


次に勝手にいなくなるようなことしたら、今度こそ咬み殺すから。




そんなことを思いながら、小さく震える柔らかい髪の毛を撫でた。











*end....................next:あとがき*

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あきゅろす。
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